もやしに負けたことがある。

　ある日、昼になったので手近なラーメン屋に入った。そして注文したラー
メンが出てきたら、そのもやしの量の多さに驚いた。もやしラーメンではな
い、普通のラーメンである。なのに、もやしが丼からあふれんばかりに盛っ
てあって、そのもやしの山のせいで麺はおろかスープすら見えない。このも
やしの山を突き崩して直接麺に行ったら、もやしの山は崩れて丼からこぼれ
落ち、あたり一面もやしだらけになるだろう。
　仕方なく、上から順に、もやしをもしゃもしゃ食べ始めた。
　ようやくスープや麺にたどりついたとき、もうもやしで腹一杯になってい
た。おまけに麺は、上から被さったもやしで蒸されて、ぐにゃぐにゃにのび
ていた。

　あのラーメンはまずかった。何を考えてあんなに、親の敵みたいにもやし
を盛るのだろう。あの時、私はもやしに負けた。
　ラーメンの具にもやしを使おうとするなら、適当な量がどれくらいかを考
えた方がいい。でないと、もやしに負ける恐れがある。レシピにあるのが、
一人前である。

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