ピーマンは子供の嫌いな野菜の筆頭に挙げられる。なるほど独特の強い臭
いと苦みがあって、子供にはつらいかも知れない。煮ても焼いても甘みが出
るとか旨味が出るとか言うこともないし、切り刻んで混ぜても匂いでそれと
分かるから、ピーマン嫌いの子供にピーマンを食べさせるのは至難の業だろ
う。
　それだけ、ピーマンは人に媚びることを知らない。我が道をゆく、潔い野
菜だという気がする。

　大人になると、それが分かる。その個性の強さで、肉の味をぐっと受け止
めて一歩も引くところがない。肉と合わせた炒め物にしょっちゅう顔を出す
のがその証拠である。焼いた肉というのは独特の匂いがある、それを受けて
立つ野菜というと、ピーマンが最も適役という気がする。
　細く切られようが、細切れにされようが、半分に割られて挽肉を詰められ
ようが、敢然と対抗し、自己主張する。その味と、歯ごたえと、鮮やかな緑
色で。
　ピーマンという奴は、なかなかハードボイルドな野菜なのである。

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