魔　女　　　恋


　本当よ。あなたを愛しているのよ。そうでなかったら食べたりしない。
魔女は残酷だって言うのね。人間はみんなそう言うわ。
でも、人間の男だって同じじゃないの。好きだ、愛してるなんて言い
ながら、それを理由に、女から見ればとんでもない裏切りを施すじゃな
いの。
「愛してなければ、こんなことしない」
なんて囁きながら、結局は肉欲に埋もれるんじゃないの。それでも「愛
してる」って、言い続けるじゃないの。男だからしかたがないって。
　魔女もしかたがないのよ。魔女は、魂を食べなければ死んでしまうの。
　もう何百年も経つけど、純粋に私を信じてくれた男はけっして多くは
なかったわ。疑り深い魂は、苦くて堅かった。ほとんどがそういう魂だ
ったのよ。
　でも、あなたの魂は、いい香りがして、とろけるように柔らかくて甘
かったわ。疑うことなんて知らずに育ったのね。それを後悔すらしなか
ったのね。あなたほど私を信じてくれた人はいないわ。どうして私みた
いな女を信じたのかしら。多くの男達のように、疑り抜けばよかったの
に。そうすれば、私はそんな魂を取ろうなんて思わなかったわ。
　どうしたのかしら。魔女のくせに泣くなんて、おかしいわね。でも、
いいの。これでもう終りなのよ。もう誰の魂も取らなくてすむわ。
　私を愛してくれたのは、あなただけだったわ。そして私も、心の底か
ら愛したのは、あなただけだったのよ。
　さようなら、愛しいあなた･･････。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　《終》